白衣の歴史は紀元前のインドに始まるが、医師は清潔であれとの考えから白い服が選ばれた。19世紀前半までの西洋医学の医師は礼服の色を表す黒いコートを着用していた。19世紀半ば頃から医学が急速に発達し始め、衛生という概念も生まれた。医師が手を洗うようになり、衛生面に気をつけるようになった19世紀末頃から、西洋の医師も黒いコートをやめ、白衣を着るようになった。看護師の白衣は医師とは違う道を歩んできた。19世紀半ばまでの看護師はワンピースに白いエプロン、そしてナースキャップを身につけていた。その頃までの看護師は病院の召使いで卑しい職業であるとの考えが支配的であった。それに変革をもたらしたのが、かの有名なナイチンゲールである。1856年クリミア戦争への従軍から帰国したナイチンゲールは、医療現場に衛生管理を浸透させ、看護学校を設立することで看護師は専門教育を必要とする立派な職業であると認知させた。その頃から看護師は白いワンピースを身につけるようになった。白は清潔感を与える理由から白衣が採用された経緯もあるが、最近の医療現場では変わってきている。その理由は補色残像によるが、特定の色を長い時間見続けると補色が残像として見える現象のことで、補色とは反対の色を指す言葉である。手術中の医師は血液の赤を見続けることで補色である緑の残像が見えるようになる。補色が見えることで業務に支障をきたす恐れがあることから、あらかじめ周囲に緑や青を配することを理由として、白衣から緑や青が採用されるようになった。