ナース服が白からカラフルな色付きに変化した背景には、業務上の弊害が大きく関係していた。かつて白衣がナース服の定番だった頃、看護師たちは補色残像に悩まされていたのである。補色残像というのは、採血や手術の際に血液を長い間見続けることにより、補足である青色の残像が長きにわたって目に残ってしまうことが頻発していた。そのため、補色残像という現象が看護師の業務に多大なる影響を与えていたのだ。こうした問題を改善すべく、色付きのナース服が導入された。さらに、補色残像はベッドカバーや枕カバー、それにカーテンなどからも影響を受けることから、これらのリネン類も白から淡い色付きのものへと変わってきている。次に、白衣性高血圧の影響を病院側が深刻な問題として受け止めるようになったからである。白衣性高血圧というのは、患者が白衣を見ることによりストレスを覚え、血圧を測ると通常よりも高い数値が出てしまうことがある。白衣性高血圧により患者の血圧を正確に測ることができないため、病院側はこれを問題として捉え、色付きのナース服を導入するに至ったのだ。このような背景から、病院では色付きナース服が広く普及し定着した。ナース服がカラフルになったことで、病院内の雰囲気が明るくなったという副次的な効果をもたらしている。また、ナースたちもカラフルな白衣を着用することで、仕事にハリが出ているという。色付きナース服の普及は、心理的かつ実務的な効果をもたらしたのだ。このように改善に改善を重ね、看護師が着用する白衣は常に進化し続けている。